めまい

後半規管耳石めまい(良性発作性頭位めまい症)

1914年ノーベル賞受賞者であるロベルトバラニ-教授によって報告された回転性のめまいです。このめまいは耳石の異常によって起こる末梢性めまいです。その多くはめまい時間は短く数秒から長くて十数秒位、まれに、数分続く長いめまいもあります。このめまいは、デスクワーク、入院など同じ姿勢を保つ生活の人に起きやすいです。更年期めまいにもこのめまいが多いです。比較的短期間に症状は軽快します。再発して長引く場合は、エプリー法を行います。

 

めまい頭痛(前庭性片頭痛)

頭痛と関係しためまいの多くはフワフワとした体の中心が取りにくい違和感のあるめまいです。めまいは良くなったかと思えば再発し、長引くのが特徴です。随伴症として、肩こり、光音臭い気圧過敏、キラキラや視野欠損などの視覚症状、シビレ・ピリピリなどの感覚症状、入眠困難、中途覚醒などの睡眠障害、寝る前のスマホ依存、運動不足など多彩です。

 

 

■ めまい問診

めまいで苦しんでいる患者さんの生活習慣、性格、考え方など、具体的に把握するためには、 何時に消灯、就寝しているか、何時に起床するか、運動の習慣はあるか、ウォーキングをしているか、三度の食事は規則正しく摂取しているか、便秘や下痢はないかなど、詳しい問診を行います。

 

■ 検査所見

頭痛の程度を表すHIT-6(78点満点)は意外にも高くありません。前庭性片頭痛のHIT-6は50~60点の傾向があります。めまい平衡機能検査では前庭眼球運動の異常や注視誘導性眼振、なかでも中枢頭位性眼振は比較的多くみられます。軽度の両側性感音神経難聴(低音域聴力低下)はかなりの頻度で見られます。白血球のうちリンパ球%の低下も高頻度に見られます。 

※めまいと頭痛の関係

紀元前131年カッバドキアのAretaeusの報告に始ります。2000年の時を経て、めまいと頭痛については1873年ビクトリア王朝の医師Edward Livingが報告しています。以来、140年の歳月を経て、めまいと頭痛の関係はより科学的、臨床的興味へと焦点が絞られていきます。2012年国際頭痛学会と国際神経耳科学会(バラニー協会)はめまいと頭痛の関係を『前庭性片頭痛』とすることで合意します。

前庭性片頭痛と統一される以前は、めまい性片頭痛、片頭痛性めまい、片頭痛関連めまい、片頭痛関連バランス障害など、多彩な名称で呼ばれていました。2012年これらのめまいは統一され前庭性片頭痛めまいと名称を変えました。神経耳科学国際バラニー協会は『成人および小児における反復性回転めまいの最も多い原因は前庭性片頭痛である』と明記しました。 

 この新しい病名『前庭性片頭痛』は2013年国際頭痛学会ICHD-3の付録A1.6.6に収録され、国際的に認知されました。
合意した診断分類ICHD-3(英語版)

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バラニ―協会診断分類.pdf
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更年期めまい

更年期女性のめまいは年々増える傾向にあり、男性の1.5~5倍という報告もあります。耳鼻科、産婦人科でよくならない治療抵抗性、難治性のめまいは脳過敏症の治療、

前庭片頭痛の治療により多くの方は改善します。

 

※:更年期のめまいは、反復する回転めまい、頭位めまい、フワフワめまい、乗り物酔いなど多彩なめまいを訴えます。
別の角度から電話インタビューによる大規模調査によると、体が不安定(91%)、体のバランス障害(82%)、めまい(57%)の順番でした。更年期のめまいはめまいの陰に隠れている体の不安定性やバランスの取りにくさにも注意を向ける必要があります。

 

※:更年期のめまいの特徴は原因の複雑さにあります。閉経後の女性は昔あった片頭痛は平均8.4年遅れて単独のめまい発作に置き換わっているという報告もあり、頭痛がめまい発作に置き換わることは珍しいことではありません。すなわち、めまいがあっても頭痛を訴えない特徴があるため、頭痛はなくても若い頃の頭痛や肩こりの有無について問診確認することが大切です。若い頃に不安、頭痛、肩こり、首のこり、生理時頭痛で困った方は結構おられます。また若い頃に吐き気、嘔吐、流涙、目の充血、鼻汁、鼻閉、顔面紅潮、発汗、瞼の浮腫・下垂などの自律神経症状、光過敏、音過敏、臭い過敏、シビレなどの随伴症状を持っていた場合は片頭痛の疑いがあります。更年期めまいは不安ストレスに対する治療と片頭痛に対する治療を平行して行うとめまいだけでなく肩こり、頭痛、腰痛、イライラ、不眠まで高い治療効果が得られます。また、低用量の女性ホルモン併用も治療効果を高めます。

 

■ 小児のめまい

3歳、4歳の幼児期からめまいを訴える子供がいます。小児の回転性および浮遊性めまいの多くは自然寛解するため、小児期良性発作性めまいと診断します。逆に、めまいはなく頭痛を訴える場合は小児片頭痛と診断します。その多くは様子を見ます。しかし、幼稚園に行けない、友達と遊べないなど日常生活に支障を来す場合、経過観察と言われると親子ともに途方にくれます。この反復する発作性のめまいを持つ小児の親、特に母親に頭痛持ちが多いことが知られています。また、めまいを起こす小児には光過敏が多いのも特徴です。このような子供さんには親子ともに生活習慣改善への強力な指導が必要です。特に小児の遅寝、子供部屋の明るすぎる天井照明の改善は必須です。
疫学的調査による小児めまいの原因は・・前庭性片頭痛39%、心因性/機能性めまい21%、その他です。この調査から分かるように、最も多いのは片頭痛関連症候群である前庭性片頭痛です。生活に支障を来たすほどの小児めまいは前庭性片頭痛と心因性めまいを合併している場合があります。この場合は生活習慣の改善だけでなく、薬剤による治療介入を必要とする場合があります。

 

注意)小児めまいの急性期に医療機関を受診した時、誘発性眼振、上方視のサッケード追従の異常、前庭機能の低下などの中枢性障害を示唆する所見があり、大学病院などの専門病院での精査を勧められ、親は驚き慌てることがあります。しかし精査してもほとんどの場合、重大な病気はまずありません。めまいの病態生理が未だに解明されていないからです。

■ その他

 

脳脊髄液減少症のめまい

意外にも盲点となっているめまいです。脳脊髄液減少症の確定診断が難しいせいもありますが、問診、ODテスト、全脊椎MRI検査などにより診断は可能です。

  

虚血発作めまい

頚部の内頚動脈、椎骨動脈の狭窄や屈曲、頚椎の変形や骨棘による椎骨動脈の圧迫、脳幹小脳に血リュを送る椎骨脳底動脈系の血流不全、梗塞、出血など

 

反射性めまい

不整脈、徐脈、突発性頻脈、血圧など循環器系の異常

 

薬剤性めまい

血圧降下薬、糖尿病治療薬、高脂血症治療薬

 

まれなめまい

脳幹小脳の神経細胞の変性脱落を伴う多系統萎縮症、聴神経腫瘍、小脳腫瘍などの脳腫瘍

 

生活指導

睡眠不足、運動不足の是正のため、睡眠日誌ではなく、生活日誌を得点制にし、生活習慣の改善を可視化することによって、本人のやる気を促し薬剤治療に匹敵する効果を期待できます。 

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■ 人騒がせな高齢者の失神

除外診断に用いるHINTSは感度99%、特異度97%であり、HINTS陰性であれば脳卒中めまいを除外できます。 

 

 

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めまい問診票 (1).pdf
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睡眠問診票.pdf
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性格やストレス問診票.pdf
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めまい体操(ブロントダロフ法).pdf
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