不眠外来

睡眠の中枢は、脳の深いところ視床下部にあります。この睡眠中枢/体内時計/高位自律神経中枢/摂食中枢は、仲良しグループです。この仲良しグループは、メラトニンによりコントロールされています。


私の不眠治療

上の図でおわかりかと思います。睡眠中枢/体内時計/自律神経中枢の三者は、仲良く向こう三軒両隣の関係にあります。

夜遅くまで起きて、眼に過剰な光を入れると体内時計は興奮します。→この興奮は、隣の睡眠中枢と自律神経の中枢を興奮させます。

 

ぐっすり睡眠には、体内時計と自律神経の鎮静化、安定化を必要とします。

夜の9時を過ぎたら、照度を落とし穏やかな照明にして下さい。

夜の9時は、昼間の覚醒ホルモンであるセロトニン、オレキシンと夜のホルモンメラトニンが交代する時間です。

 

睡眠随伴症

 

うつ、イビキ無呼吸、ムズムズ脚、レム睡眠行動障害、肩こり、頭痛、めまい、頻尿、腰痛、寝る前スマホ・飲酒は不眠の原因となります。これら病気の治療や生活習慣の改善は大切です。

 

寝なきゃ損ばかり

睡眠は脳の疲れを取る大切な役目を果たしています。記憶の増強(LTP)と不要な記憶の消去(LTD)です。重くなったパソコンから不要なデータを消去すると容量に余裕が戻り動きが早くなります。脳も不要な記憶を消去することによって認知機能(記憶力)が良くなります。脳のゴミアミロイドβの掃除と記憶の整理整頓をしてくれる睡眠は認知機能と情緒の改善に貢献しています。

 

 

 

  新世代睡眠薬

覚醒ホルモンオレキシンの受容体拮抗薬であるスボレキサント(ベルソムラ10㎎、15mg、20㎎)はほぼ副作用はありません。覚醒ホルモンオレキシン拮抗薬レンボレキサント(デエビゴ2.5㎎、5㎎、10㎎)はベルソムラに比べ即効性があると言われています。副作用としてまれに入眠時の異常な悪夢、幻覚を見ることがあります。これら新世代睡眠薬は、試してみる価値はありますが薬効は弱い印象です。

 

高齢者向きの睡眠薬

従来型の睡眠薬ゾピクロン(アモバン)を光学分割して得られたエスゾピクロン(ルネスタ1㎎、2㎎、3㎎)は低力価に抑えられているため副作用の発現リスクは低く、半減期5.7時間、高齢者は若干延長し8時間強のため夜間の睡眠時間にほぼ作用するので高齢者には使いやすいと言われています。厚労省が、唯一警告を出さなかった睡眠薬です。

 

その他

・アミトリプチリン5~10㎎

最初はうつへの薬効が発見されました。この薬はてんかん、三叉神経痛の特効薬であるテグレトールと構造式が近似しています。脳内ホルモンであるノルアドレナリン・セロトニンを増やすことにより、脳幹中脳から脊髄後角に至る下降性疼痛抑制系を賦活化させ、強い鎮痛・鎮静作用を発揮します。鎮痛効果はリリカ・トラムセットより強く、癌性疼痛にも使用されます。片頭痛、睡眠障害、夜間頻尿、夜尿症にも使われます。

 

・バルプロ酸ナトリウム100~200㎎

GABAトランスアミナーゼ阻害作用によりGABA濃度を上昇、またドパミン濃度も上昇させ脳内抑制系を活性させ鎮痛・鎮静作用を発揮します。不機嫌易怒症に対する気分安定化作用、てんかん、片頭痛の特効薬として知られています。神経内科、心療内科、精神科、ペインクリニック領域において広く処方されています。

 

 ・プロプラノロール5~10㎎

1966年Rabkinが片頭痛への有効性を発見、高血圧、頻拍性不整脈に対する効果、抗不安作用など循環器、神経内科、心療内科等で幅広く使用されています。交感神経β受容体に対する抑制作用は強く、自律神経の興奮を鎮静します。

 

・リスペリドン0.5㎎・クエチアピン12.5㎎

保険適応は小児自閉症と統合失調症ですが、気分安定化作用を有し、睡眠を深める作用があり、他剤との相互作用も少ないので、異痛症、睡眠障害などに有効です。リスペリドンはドパミン作動性D2受容体への結合親和性よりもセロトニン作動性5-HT2a受容体に対し10~20倍高い親和性を持っており、思考安定し気分障害を改善します。もう一つの作用は、橋青斑核A6神経にあるα2a受容体に作用し交感神経を鎮静化します。また、興奮覚醒に作用するノルアドレナリンを抑制する作用があります。結果として、睡眠を深めます。

 

 ・クロナゼパム0.5㎎

抗てんかん薬ですが、幅広い診療科で処方されます。exceptionally high use as millions of prescriptions

クロナゼパムはGABAの神経抑制作用を増強することで抗けいれん、筋弛緩、鎮静、抗不安作用を発揮します。臨床上はミオクロニー発作、欠神発作、パニック発作、片頭痛発作、ムズムズ脚症候群、さらに扁桃核から大脳辺縁系の鎮静化作用により恐怖、悪夢、レム睡眠行動障害に効果を発揮します。長期使用は、ベンゾジアゼピン系に属する薬の為、抗コリン作用と認知症へのリスクがあります。

 

睡眠サプリメント

 

プロスタグランジンは痛みを教え、体温中枢を設定し、睡眠を誘発するホルモンです。プロスタグランジンはアデノシンを誘発。アデノシンは視床下部の睡眠中枢にあるアデノシンA2Aを刺激し睡眠を誘発します。このアデノシンA2A受容体を刺激する物質が見つかれば不眠症の治療に革命がおこります。早速アデノシン擬似薬が続々と登場しました。睡眠サプリ酒精酵母6号、他にGABAL-テアニン、グリシンなどの睡眠サプリメントです。