私の頭痛外来には難治性の方が多いです。
頭痛外来を受診されるのは片頭痛の方が多く、すでに治療を受けられており中には抗体薬エムガルデイ、アジョビの皮下注射を受けておられる方もおられます。高価な治療を受けているにもかかわらず、頭痛がとれないと受診されます。いわゆる頭痛難民の方には、受けられている治療薬の分析と生活習慣を詳細にお聞きします。
対処法としてバルブロ酸ナトリウムの血中濃度を測りたいのですが、保険適用ではないので治験段階での情報を調べ、薬剤の種類と量を調節します。抗体薬を使っても頭痛で生活に支障をきたしている場合には生活習慣の是正を指導します。私は、米国の片頭痛治療/欧州の片頭痛治療/日本の片頭痛治療、3者の治療を比較し、最良と思える処方を行っております。
■頭痛の随伴症状
片頭痛は目の奥が痛い、じっとしていたいほど痛い、ホッとした夕方や夜間に多いなどの特徴があります。緊張性頭痛に少ない症状として片頭痛特有の随伴症状があります。それは肩こり、めまい、光・音・臭い過敏、顔手足のシビレ・ピリピリなどの随伴症状です。頭痛は訴えず、随伴症状を主訴として来院される方もおられます。例えば、めまい、肩こり、光過敏のため日常生活に支障のある方も結構おられます。脳過敏症の症状である顔や手足のシビレ・ピリピリが気になって来院される方には、ドパミン・セロトニン調整薬で治療します。
■緊張性頭痛
合併する緊張性頭痛の治療はどうするのか、、の質問をよく受けます。不思議に思われる方も結構おられますが片頭痛の治療で緊張性頭痛は軽減します。筋弛緩薬は不要と考えています。
■閃輝暗点
頭痛を伴わない閃輝暗点に驚き眼科を受診、異常はないと言われ検査を希望して受診される方がおられます。閃輝暗点は眼動脈が異常に収縮し網膜の血流低下や視中枢領域の血管収縮による血流低下による虚血現象として眼前にチカチカ光が出たり、文字が見えにくくなったりする閃輝暗点が生じます。この閃輝暗点に続いて一般には頭痛が起きますが、閃輝暗点だけの方もおられます。この場合は特に治療はせず生活指導を行います。
■インドメタシン反応性頭痛
インドメタシン反応性頭痛はトリプタンも他の鎮痛剤も無効でありながらインドメタシンだけが著効する一群の頭痛です。診断は比較的容易です。あちらこちらの頭痛外来でイミグランやマクサルトをもらっても効かない、カロナール、ロキソニンも効かないと訴えます。症状は特徴的で一側の眼窩、眼窩上部または側頭部に強い痛みを訴えます。頭痛と同時に自律神経症状である結膜充血、流涙、鼻閉または鼻汁、眼瞼浮腫、眼瞼下垂などを伴います。⇒三叉神経、自律神経系頭痛の一種。なお、なぜか女性に多いのが特徴です。インドメタシン坐薬で頭痛は完全に消失します。
・ナイト治療
午後8時~10時までに、1日1回、少量のお薬を内服していただきます。
夜1回内服する治療は時間薬理学に基づいています。
治療薬としては抗てんかん薬(バルプロ酸徐放薬、トピナなど)、三環系抗うつ薬(トリプタノールなど)、βブロッカープロプラノロール(インデラル)、ワソラン、サインバルタなども使用されます。これらの薬がなぜ頭痛に効くのか、詳しくは私の処方薬の説明をご覧ください。
・抗体薬治療
この薬は、三叉神経に好発する、片頭痛の発現に重要な働きをしていると考えられているカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)に選択的に結合し、CGRP受容体への結合を阻害することで、片頭痛発作の発症を抑制する皮下注射薬です。
2021年のエムガルティ注に次いで、アジョビ、アイモビーグが発売されました。
・生活指導
頭痛、光過敏、音過敏、臭い過敏、閃輝暗点、めまい、耳鳴り、シビレ・ピリピリなどの症状に対して、ストレス軽減のため早寝就寝、便秘の解消、明るすぎる照明の是正、ウォーキングの推奨など生活指導は大切です。頑張りすぎない、気を遣いすぎない、こだわらないなど考え方の改善指導も併せて行います。
・合併する光過敏
片頭痛に多く合併する光過敏は生活に支障をきたすほどの方もおられます。子供なら、昼間明るい運動場で体操ができない、昼間眩しくて外に出れない、運転ができないなど様々です。この光過敏は正しい治療をすれば驚くほどよくなります。
・合併する耳鳴り
耳鳴りを気にして耳鼻科を受診し、異常なしと言われる方は結構おられます。耳鳴りは実は音過敏の一種です。若い頃に片頭痛を持っていた方が加齢と共に頭痛は軽減したが耳鳴りに苦しむケースがあります。このような方は脳過敏症や片頭痛の治療によって耳鳴りが軽減し喜ばれます。
・合併するめまい
片頭痛に多い合併症にめまいがあります。頭痛は軽く、めまいのほうが支障をきたす場合もあります。めまいで耳鼻科を受診され異常ないと言われて、こちらを受診される方が結構おられます。めまいは片頭痛に合併した脳の病気ですから、片頭痛の治療が必要です。正式病名は前庭片頭痛と言います。
めまいは… 👉コチラをご覧ください。
・合併する顔、手足のシビレ・ピリピリ痛
このシビレ・ピリピリ痛は整形外科など受診されてもよくならないはずです。なぜなら、片頭痛、ストレスと関係する異痛症アロディニアだからです。
シビレ・ピリピリアロディニア異痛症は… 👉コチラをご覧ください。
※注意事項:頓服のトリプタン製剤は痛みの初期に内服するとよく効きます。ただし、週に3錠、月14錠までは安全です。
多く飲みすぎるとかえって頭痛が増強する逆作用がありますので、ご注意ください。
女性の片頭痛の多くは月経と何らかの関連を持つ前兆のない片頭痛が多いと言われています。月経は美しさをもたらす天の恵みと言われています。月経時片頭痛はエストロゲンの血中濃度の高い状態が続いた後で急速に低下するエストロゲン離脱によって誘発されます。エストロゲン離脱はグルタミン酸などの興奮系とGABAなどの抑制系のバランスを乱し、脳血管拡張作用を持つために生じると考えられています。持続時間が長く、痛みが強く、治療抵抗性などの特徴があり、困っている女性が多いのが実状です。しかし、正しい治療で対応すれば随分と楽になり喜ばれます。 対応策は月経数日前から月経中にかけての1週間を集中的に対応します。私が勧めるのは血中半減期の長いアマージを就寝前に内服します。内服により夜間睡眠中の頭痛発作は減少し、十分な睡眠を確保できます。1日2錠まで内服可能です。NSAIDsであるカロナール、ロキソニン、イブなどを上手に組み合わせて使ってもらいます。効果不十分の場合は就寝前だけ片頭痛予防薬を内服します。
妊娠との関係
妊娠4~7週は催奇形の危険が高い絶対過敏期です。この時期にはいかなる薬物療法も駄目です。特にバルプロ酸(デパケン、セレニカR、バレリンなど)は禁忌です。妊娠20週以降は催奇性の危険は大幅に減少します。幸いなことに、妊娠中は頭痛発作が減少する傾向があります。妊娠と薬剤についての詳しい情報は、妊娠と薬情報センターをご参照下さい。
頭痛インパクトテスト(Headache Impact Test:HIT)とは
仕事、学校、家庭および社会において「頭痛」が個人の活動にどのような影響を与えるかを測定するためのツールです。スコアが57点以上だったら、日常生活に何らかの支障をきたしており、受診治療をお勧めします。
※頭痛インパクトテストは以下の組織に著作権があります。
©2000、2001 QualityMetric.Inc. and GlaxoSmithKline Group of Companies
わずかなスペースで、ひとりで簡単にできる肩こり・頭痛予防体操です。