不眠外来

睡眠導入剤を使わない不眠治療を行っています。

 

若い人は、睡眠に対する不安と、昼夜リズムの乱れを起因とする場合が多い。

高齢者は、睡眠中枢の老化を起因とする場合が多い。

 

不眠の原因について様々な角度から解説します。

睡眠の中枢は

脳の深いところ視床下部にあります。視床下部には、①体内時計(概日リズム調整時計)、②高位自律神経中枢、③睡眠覚醒中枢、④摂食中枢が仲良く隣合わせに収まっています(下の蜂の巣の図で説明)。

 

睡眠は体内時計とメラトニンによりコントロールされています。


不眠を治すには ⇒体内時計を正常化する

不眠でお困りの方は、害のない薬を手っ取り早く処方してもらって、ぐっすり眠りたいと受診されます。このイライラとした治療希望は、かえって不眠を複雑にします。あなたは、不眠の原因である体内時計の昼夜リズムを正常化する必要があります。

 

人類は、200万年の歴史の中で、199万9千900年は、午後8時を夜の始まりとしていました。人類は、この100年、蛍光灯、LEDを手に入れ、体内時計のリズムを乱す遅寝を始めました。

 体内時計の役目は3つあります。

① 概日リズム:体内時計は昼夜のサイクルを整えます。

② ホルモン分泌:体内時計は成長ホルモン、メラトニンの分泌を調整します。

③ 自律神経:体内時計は自律神経のリズムを正し、睡眠障害を是正します。

 

・早寝は、体内時計と自律神経を鎮静化、安定化させます。

・夜8時になったら、部屋の天井照明を切って間接照明に切り替えて下さい。

・夜9時以降は、テレビ、スマホ、タブレットなどブルーライトの多い画面を見ないで下さい。

夜10時半には消灯しましょう。

・不眠の治療は、お薬も必要ですが、あなたの協力が大切です。

 

治療薬

①ベンゾジアゼピン系睡眠薬は原則使用しません

 

私が推奨するのは、睡眠薬とは無関係のメラトニンとデエビゴの組合せです。なぜ無害なのか、薬理作用について受診時に外来で説明します。

従来の睡眠薬は、依存性と認知症を誘発する危険性があるためです。

 睡眠薬と認知症の関係については有りとする発表と無いとする発表が混在します。不眠と認知症に関する発表は多数有ります。

 

②新規睡眠薬は試してみる価値はあります

 

脳を覚醒させるホルモンオレキシンベルソムラ(スポレキサント)、デエビゴ(レンボレキサント)、クービビック(ダリドレキサント)は抗コリン作用がほとんどなく依存性が少ないため高齢者にも使いやすいです。

 

③魔法の粉薬

 ・幸せホルモンセロトニンを増やすお薬

 ・ストレス緩和ホルモンGABAを増やすお薬

 ・完璧、こだわり、達成感を求めるドーパミンを抑えるお薬

 ・自律神経を安定させるお薬

これらを少量ずつ組み合わせた粉薬(魔法の粉薬)を夜1回内服して頂きます。

 私の処方する粉薬は、夜1回内服のナイト治療です。

粉ですから、自分の適量に減らし調整することは容易です。

 

④ベンゾジアゼピン系抗不安薬の中で抗コリン作用(便秘、尿閉、ふらつきなど)が相対的に軽い、臨床的に問題になりにくい作用時間の短い(短時間型)の薬として、私が好んで使うのはクロチアゼパム(リーゼ)アルプラゾラム(ソラナックス)です。このリーゼの対極にある長時間作用型の抗不安薬としてオキサゾラム(セレナール)があります。長時間型ではありますが、抗コリン作用が比較的軽い薬で不安の強い人に処方しています。

⑤睡眠薬

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の中で、私が好んで使うのはエスゾピクロン錠です。この薬はゾピクロン(アモバン)のS型光学異性体でGABA受容体に作用し穏やかな睡眠誘発作用を持っています。抗コリン作用が弱いため口渇、便秘、ふらつき、尿閉などの副作用が弱く高齢者にも使えます1mg、2mg、3mgの3種類があります。高齢者は最高2mgです。副作用が少ないため唯一30日の処方制限がありません。唯一の欠点は苦みです。

 

⑥意外に多い二次性不眠:原因の治療を行います。

うつ、イビキ無呼吸、ムズムズ脚、レム睡眠行動障害、

首こり、肩こり、頭痛、めまい、頻尿(過活動膀胱)、腰痛、飲酒など。

 

⑦高齢者向き睡眠薬

・エスゾピクロン2mg

従来型の睡眠薬ゾピクロン(アモバン)を光学分割して得られたエスゾピクロン(ルネスタ1㎎、2㎎、3㎎)は低力価に抑えられているため副作用の発現リスクは低く、半減期5.7時間、高齢者は若干延長し8時間強のため夜間の睡眠時間にほぼ作用するので高齢者には使いやすいと言われています。厚労省が、唯一警告を出さなかった睡眠薬です。

 

・アミトリプチリン5~10㎎

最初はうつへの薬効が発見されました。この薬はてんかん、三叉神経痛の特効薬であるテグレトールと構造式が近似しています。脳内ホルモンであるノルアドレナリン・セロトニンを増やすことにより、脳幹中脳から脊髄後角に至る下降性疼痛抑制系を賦活化させ、強い鎮痛・鎮静作用を発揮します。鎮痛効果はリリカ・トラムセットより強く、癌性疼痛にも使用されます。片頭痛、睡眠障害、夜間頻尿、夜尿症にも使われます。

 

・バルプロ酸ナトリウム100~200㎎

GABAトランスアミナーゼ阻害作用によりGABA濃度を上昇、またドパミン濃度も上昇させ脳内抑制系を活性させ鎮痛・鎮静作用を発揮します。不機嫌易怒症に対する気分安定化作用、てんかん、片頭痛の特効薬として知られています。神経内科、心療内科、精神科、ペインクリニック領域において広く処方されています。

 

 ・プロプラノロール5~10㎎

1966年Rabkinが片頭痛への有効性を発見、高血圧、頻拍性不整脈に対する効果、抗不安作用など循環器、神経内科、心療内科等で幅広く使用されています。交感神経β受容体に対する抑制作用は強く、自律神経の興奮を鎮静します。

 

・リスペリドン0.5㎎・クエチアピン12.5㎎

保険適応は小児自閉症と統合失調症ですが、気分安定化作用を有し、睡眠を深める作用があり、他剤との相互作用も少ないので、異痛症、睡眠障害などに有効です。リスペリドンはドパミン作動性D2受容体への結合親和性よりもセロトニン作動性5-HT2a受容体に対し10~20倍高い親和性を持っており、思考安定し気分障害を改善します。もう一つの作用は、橋青斑核A6神経にあるα2a受容体に作用し交感神経を鎮静化します。また、興奮覚醒に作用するノルアドレナリンを抑制する作用があります。結果として、睡眠を深めます。

 

 ・クロナゼパム0.5㎎

抗てんかん薬ですが、幅広い診療科で処方されます。exceptionally high use as millions of prescriptions

 

クロナゼパムはGABAの神経抑制作用を増強することで抗けいれん、筋弛緩、鎮静、抗不安作用を発揮します。臨床上はミオクロニー発作、欠神発作、パニック発作、片頭痛発作、ムズムズ脚症候群、さらに扁桃核から大脳辺縁系の鎮静化作用により恐怖、悪夢、レム睡眠行動障害に効果を発揮します。長期使用は、ベンゾジアゼピン系に属する薬の為、抗コリン作用と認知症へのリスクがあります。

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ムズムズ脚症候群

 

入眠時、特に下肢に不快感があって、足をじっとしておれないため入眠が障害される。

・寝た後も下肢の不快感のため、無意識に布団を蹴ったりして寝相が悪いのが特徴です。

・その真の原因は十分に解明されていませんが、脳内のドパミンと呼ばれる神経伝達物質の異常、鉄分の不足、遺伝性、原因不明など。

・将来的にパーキンソン病や認知症や多系統萎縮症などの難病につながるリスク因子と言われています。

・きちんとした診断と治療および経過観察が必要です。

症状

  • 多くは60代~の女性に好発します。若年発症の場合はその半数に家族性があります。鉄欠乏性貧血、妊娠後期、パーキンソン病、腎透析の人たちに起こりやすい傾向があります。
  • 症状は夕方から特に就寝前など静かにしていると主に下肢に火照り感、不快感、虫が這うようなムズムズ感、なかには不快痛を生じます。
  • むずむず脚症候群の多くは、約80%の方に周期性四肢運動障害を合併します。この病気は睡眠中に足首の関節をピクッピクッと背屈させる周期的な動きを繰り返します。この運動回数が多いと睡眠の質を悪くし熟眠感不足を来します。治療はむずむず脚と同じです。

治療

・軽症の場合は、生活習慣の改善により薬を使わずに改善できることもあります。

・不足した鉄の補充、ドパミンの働きを良くするお薬、ドパミン受容体作動薬(ビシフロール、ニュープロパッチ)。

・特発性むずむず脚には、抗てんかん薬ガバペンチンのプロドラッグであるレグナイト錠が有効な場合があります。

・症状が夜間だけの場合は抗てんかん薬リボトリール、ランドセン、ガバペンが有効な場合があります。

 注)遅寝、カフェイン、アルコールは症状を悪化させるので要注意です。

薬の使用上の注意

ドパミン受容体作動薬を長期内服する場合、数カ月~半年経つと、まれに、内服しているのに症状が悪化する、反跳現象が見られることがあります。抗てんかん薬のリボトリール、ランドセンは、強い抗不安作用を持つため、睡眠障害を伴うムズムズ脚に好んで使われますが、耐薬性、依存性があります。ドパミン受容体作動薬、抗てんかん薬、いずれも長期に内服する可能性が高いので、少量処方にとどめる必要があります。

予後

むずむず脚症候群および高率に合併する周期性四肢運動障害の長期予後についての論文発表はいまだ十分なものはありません。むずむず脚症候群は神経伝達ホルモンドーパミンの機能低下と考えられています。同じ病因であるパーキンソン病、パーキンソン関連疾患との関連について経過観察する必要があります。

むずむず脚重症度スケール

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レム睡眠行動障害 

ソフトタイプ RBE (rem sleep behavioral events

注目すべきは暴力的でない合目的的要素を含む単純小規模運動や発声はレム睡眠行動障害の前段階と考えられており、暴力的でないから、この程度は普通の寝相の悪さと軽視してはいけません。パーキンソン病の発症前段階に見られる早期サインとして重視する報告が散見されます。

レム睡眠行動障害 

ハードタイプ RBD 

レム睡眠時に起きる症状です。好発年齢は50歳以降。

レム睡眠中に見た夢に伴って、筋肉が覚醒状態になり、身体が夢と一緒に反応し、行動します。睡眠中に大声でわめいたり、腕を振り回したり、足で蹴ったり、突然歩き出したり、隣で寝ているパートナーに迷惑をかけたり、自分自身も怪我をする場合があります。明け方の3~5時頃に起こりやすい特徴があります。

レム睡眠行動障害RBDを合併する病気

  合併率
 パーキンソン 30~50%
多系統萎縮症 70%
ナルコレプシー 50%

脳血管障害

常圧水頭症

トゥーレット症候群

まれ

 

 

治療

抗てんかん薬バルプロ酸ナトリウム、クロナゼパム、ドーパミンを増やすパーキンソン治療薬ドーパミンアゴニストを使用します。メラトニンが有効なことがあります。

他院でSSRI(ルボックス、パキシル、ジェイゾロフト、レクサプロ)、抗うつ薬(ミルタザピ)、βブロッカー(メインテート、アテノロール)、セレギリン等を内服中の方は減薬をお願いすることがあります。

 

鑑別診断

レム睡眠行動障害と類似の症状がみられる病気として

閉塞性睡眠時無呼吸、睡眠時周期性四肢運動(その多くはむずむず脚を合併)、薬剤性、睡眠関連過運動てんかんなどがあります。

これらはレム睡眠行動障害と極めて類似した症状、大声で寝言を言う、叩く、蹴る、殴る、叫ぶなどです。

各種抗うつ薬:三環系、選択的セロトニン再取り込み薬阻害薬SSRI、セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬SNRI内服中の患者さんに見られるレム睡眠行動障害に似た症状は発生機序は異なると考えられています。

したがって、レム睡眠行動障害の確定診断にはビデオ終夜睡眠時ポリグラフ検査vPSGが必要です。

 

検査

①1泊入院によるビデオ終夜睡眠ポリグラフ検査が必要です。とはいえ、患者負担4万円と高額であり、全員が受けれる検査ではありません。簡易法として自宅での睡眠中のスマホビデオで診断する場合もあります。

②軽度の動作緩慢や頑固な慢性便秘を有する場合は、線条体へのドパミン取り込みをみるダットスキャン検査を受けて頂く場合があります。この検査は、内被爆と検査料高額の為、理解と協力を頂く必要があります。

 

予後

レム睡眠行動障害はシヌクリノパチーとの関連が強く、将来的にレビー小体の沈着するレビー小体型認知症やパーキンソン病へつながっていく場合があります。私は、60歳以上の男性の場合は本人に対し将来的にパーキンソン病やレビー小体病になるリスクがあることを伝えています。経過によって、少量の抗パーキンソン剤を予防的に処方しています。

1280人の予後についての多施設共同研究(Brain142:2019)ではパーキンソン病などの神経変性疾患への移行率は年6.25%、初診時を起点にすると3年で17.9%、5年で31.3%、10年で60.2%と報告されています。 

 

 

ノンレム睡眠時随伴症

 

 

ノンレム睡眠から目を覚ます覚醒時に起きやすい症状です。好発年齢は5~12歳の小児です。夢遊病、寝ぼけ。夜驚症、夜尿症などがあります。多くは成長するにつれて、自然治癒します。成人に多く発症するのは睡眠関連摂食障害SREDです。

 

・睡眠関連摂食障害 SRED
この病気はストレス過の20~30代女性に多く、入眠1時間くらい経ったノンレム睡眠時に無意識に冷蔵庫を開けて食べ物を探して食べたり料理を作って食べたりします。夜間に高カロリー食を摂取するため約半数の患者さんは肥満します。外傷(約30%)や火事を起こす危険性があります。ストレス過の女性が多いため気分障害や不安障害を合併していることもあり、多剤内服の方が多いです。そのため薬剤性SREDに注意が必要で
す。薬剤としてはトリアゾラム(ハルシオン)、ゾルピデム(マイスリー)またアミトリプチリン(トリプタノール)、リスペリドン(リスパダール)などでも見られるという報告があります。

 

 

治療

 

レム睡眠行動障害RBDとほぼ同様の治療を行います。他の医療機関で処方を受けているケースが多いので薬剤間の配慮が必要です。

 

 

参考資料

 寝なきゃ損ばかり

睡眠は脳の疲れを取る大切な役目を果たしています。記憶の増強(LTP)と不要な記憶の消去(LTD)です。重くなったパソコンから不要なデータを消去すると容量に余裕が戻り動きが早くなります。脳も不要な記憶を消去することによって認知機能(記憶力)が良くなります。脳のゴミアミロイドβの掃除と記憶の整理整頓をしてくれる睡眠は認知機能と情緒の改善に貢献しています。

 

 

新世代睡眠薬

覚醒ホルモンオレキシンの受容体拮抗薬であるスボレキサント(ベルソムラ10㎎、15mg、20㎎)はほぼ副作用はありません。覚醒ホルモンオレキシン拮抗薬レンボレキサント(デエビゴ2.5㎎、5㎎、10㎎)はベルソムラに比べ即効性があると言われています。副作用としてまれに入眠時の異常な悪夢、幻覚を見ることがあります。これら新世代睡眠薬は、試してみる価値はありますが薬効は弱い印象です。

 

 

睡眠サプリメント

 

プロスタグランジンは痛みを教え、体温中枢を設定し、睡眠を誘発するホルモンです。プロスタグランジンはアデノシンを誘発。アデノシンは視床下部の睡眠中枢にあるアデノシンA2Aを刺激し睡眠を誘発します。このアデノシンA2A受容体を刺激する物質が見つかれば不眠症の治療に革命がおこります。早速アデノシン擬似薬が続々と登場しました。睡眠サプリ酒精酵母6号、他にGABAL-テアニン、グリシンなどの睡眠サプリメントです。