■ベストな治療薬の選択
頭痛外来を受診されるのは片頭痛の方が多い。すでに抗体薬エムガルデイ、アジョビの皮下注射を受けておられる方もおられます。治療を受けているにもかかわらず、頭痛がとれない方には、第一選択薬バルブロ酸ナトリウム(デパケン、セレニカ)を有効血中濃度まで増量処方します。第二選択薬は、主に、抗うつ薬(トリプタノール)や抗てんかん薬(リボトリール、ランドセン)を、第三選択薬は、βブロッカーなどを、米国の片頭痛治療/欧州の片頭痛治療/日本の片頭痛治療、3者の治療薬を参考にして、あなたにとって最良の薬剤を選択します。
■随伴症状だけの片頭痛
頭痛は訴えず、肩こり、めまい、光・音・臭い過敏、顔手足のシビレ・ピリピリなどの随伴症状を主訴として来院される方がおられます。これらの症状は、頭痛はなくても立派な片頭痛です。
肩こり型片頭痛
めまい片頭痛(前庭性片頭痛)👉詳しくはこちら
光過敏、音過敏、臭い過敏型片頭痛
いずれも片頭痛治療により軽快します。
■緊張型頭痛
不思議に思われる方も結構おられますが、片頭痛の治療で緊張型頭痛は軽減します。筋弛緩薬は不要と考えています。
■閃輝暗点に驚いて受診
頭痛を伴わない閃輝暗点に驚き眼科を受診、異常はないと言われ、検査を希望して受診される方がおられます。閃輝暗点は眼動脈が異常に収縮し網膜の血流低下や視中枢領域の血管収縮による血流低下による虚血現象として眼前にチカチカ光が出たり、文字が見えにくくなったりする閃輝暗点が生じます。この閃輝暗点に続いて一般には頭痛が起きますが、閃輝暗点だけの方もおられます。この場合は特に治療はせず生活指導を行います。
■インドメタシン反応性頭痛
インドメタシン反応性頭痛はトリプタンも他の鎮痛剤も無効でありながらインドメタシンだけが著効する一群の頭痛です。診断は比較的容易です。あちらこちらの頭痛外来でイミグランやマクサルトをもらっても効かない、カロナール、ロキソニンも効かないと訴えます。症状は特徴的で一側の眼窩、眼窩上部または側頭部に強い痛みを訴えます。頭痛と同時に自律神経症状である結膜充血、流涙、鼻閉または鼻汁、眼瞼浮腫、眼瞼下垂などを伴います。⇒三叉神経、自律神経系頭痛の一種。なお、なぜか女性に多いのが特徴です。インドメタシン坐薬で頭痛は完全に消失します。
■抗体薬治療の現状と課題
この薬は、三叉神経に好発する、片頭痛の発現に重要な働きをしていると考えられているカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)に選択的に結合し、CGRP受容体への結合を阻害することによって片頭痛の発症を抑制する皮下注射タイプの抗体薬です。
2021年のエムガルティ注に次いで、アジョビ、アイモビーグなどが発売されました。これらの抗体薬は、バイオ医薬品であり、高い治療効果と副作用の低減が期待されます。課題は、低コスト化や安定供給体制の確立が課題です。
製品名 | エムガルティ | アイモビーグ |
---|---|---|
薬価 | 42,675円 | 39,980円 |
3割負担 | 12,802円(初回 25,604円/2本) | 11,694円 |
本数/年 | 初年 13本2年目以降 12本 | 13本 |
1日当たり | 約400円 | 約400円 |
■生活に支障を来すほどの光過敏
片頭痛に多く合併する光過敏は生活に支障をきたすほどの方もおられます。子供なら、昼間明るい運動場で体操ができない、昼間眩しくて外に出れない、運転ができないなど様々です。この光過敏は正しい治療をすれば驚くほどよくなります。
■生活に支障を来すほどの耳鳴り
耳鳴りを気にして耳鼻科を受診し、異常なしと言われる方は結構おられます。耳鳴りは実は音過敏の一種です。若い頃に片頭痛を持っていた方が加齢と共に頭痛は軽減したが耳鳴りに苦しむケースがあります。このような方は脳過敏症や片頭痛の治療によって耳鳴りが軽減し喜ばれます。
■生活指導
ストレス軽減のため早寝就寝、便秘の解消、明るすぎる照明の是正、ウォーキングの推奨など、生活指導は大切です。頑張りすぎない、気を遣いすぎない、こだわらないなど考え方の指導も併せて行います。
女性の片頭痛の多くは月経と何らかの関連を持つ前兆のない片頭痛が多いと言われています。月経は美しさをもたらす天の恵みと言われています。月経時片頭痛はエストロゲンの血中濃度の高い状態が続いた後で急速に低下するエストロゲン離脱によって誘発されます。エストロゲン離脱はグルタミン酸などの興奮系とGABAなどの抑制系のバランスを乱し、脳血管拡張作用を持つために生じると考えられています。持続時間が長く、痛みが強く、治療抵抗性などの特徴があり、困っている女性が多いのが実状です。しかし、正しい治療で対応すれば随分と楽になり喜ばれます。 対応策は月経数日前から月経中にかけての1週間を集中的に対応します。私が勧めるのは血中半減期の長いアマージを就寝前に内服します。内服により夜間睡眠中の頭痛発作は減少し、十分な睡眠を確保できます。1日2錠まで内服可能です。NSAIDsであるカロナール、ロキソニン、イブなどを上手に組み合わせて使ってもらいます。効果不十分の場合は就寝前だけ片頭痛予防薬を内服します。
妊娠との関係
妊娠4~7週は催奇形の危険が高い絶対過敏期です。この時期にはいかなる薬物療法も駄目です。特にバルプロ酸(デパケン、セレニカR、バレリンなど)は禁忌です。妊娠20週以降は催奇性の危険は大幅に減少します。幸いなことに、妊娠中は頭痛発作が減少する傾向があります。妊娠と薬剤についての詳しい情報は、妊娠と薬情報センターをご参照下さい。
頭痛インパクトテスト(Headache Impact Test:HIT)とは
仕事、学校、家庭および社会において「頭痛」が個人の活動にどのような影響を与えるかを測定するためのツールです。スコアが57点以上だったら、日常生活に何らかの支障をきたしており、受診治療をお勧めします。
※頭痛インパクトテストは以下の組織に著作権があります。
©2000、2001 QualityMetric.Inc. and GlaxoSmithKline Group of Companies
わずかなスペースで、ひとりで簡単にできる肩こり・頭痛予防体操です。